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『ゼロの大魔王』 前ページ次ページゼロの大魔王 草原の中に少年少女達が円を描くようにして集っていた。 その中心に立つ桃色の髪の少女が朗々と呪文を詠唱し、それに応じるかのように奇跡の業が顕現する――わけではなく味も素気もない爆発が起こった。 そこまでは周囲の予想通りであったため動揺も何もない。すでに地面には爆発によって散々穿たれた跡がある。 だが、少女は息を呑んだ。今回は立ち上った煙の向こうに影が見える。 (やった……!) 女は召喚の儀式によって使い魔を呼びだそうとしていた。 普段から魔法は失敗ばかり、起こるのは爆発のみ。周りの人間からもバカにされ、「ゼロのルイズ」という有り難くない名前もちょうだいした。 だが、使い魔の召喚に成功すれば――欲を言えば強力なものならば今までの蔑視や嘲笑を叩き返してお釣りがくる。次第に煙が薄れていくのを、目を皿のようにして見つめている。 煙が消えると一人の青年が立っていた。 頭の角や額の中央にある第三の眼が人間ではないことを何よりも雄弁に物語っている。 瞼は閉ざされており、腰までとどこうかという長い白銀の髪が風に揺れた。身に纏う衣は上質なものであり、佇んでいるだけで上に立つ者特有の空気をまき散らしている。 少年達が口を開きかけ、虚しく閉ざした。彼の眼が開かれ周囲を睥睨したためである。 彼の眼には呼び出した少女も取り囲む子供達も映っていないようだった。 他者が存在しないかのように視線が動き、己の両腕に留まる。全身を――世界を照らす光が信じられぬというように。 その顔がゆっくりと空に向き、彼は手を上げた。そのまま天空に輝く日輪を掴み取る仕草をする。 彼を囲む者達は凍りついていた。本来ならば失敗してばかりの少女の成功に何らかの反応を示すところだが、中央に立つ者の姿がそれを許さなかった。 しばらくの間両腕を広げて存分に光を味わっていた彼は、ようやく自分の置かれた状況を確認する気になったのか正面に立つ少女に視線を向けた。 「わ、私はルイズ。……あなたは?」 頭と舌がうまく働かず、そう言うだけで精いっぱいだった。いつもの彼女ならば「アンタ誰」で済ませただろうが、そのような態度を取るのはさすがに躊躇われた。 青年は不敵な笑みを浮かべ、答えた。 「余はバーン。大魔王バーンだ」 前ページ次ページゼロの大魔王
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大いなる獣の奈落65 13Fレジェンドホース×ゴッドライダー (92)アイザック とどろく空の巣65 16Fレジェンドホース×ゴッドライダー (47)アイザック 残された夢の奈落68 13Fレジェンドホース×ゴッドライダー (33)アイザック 残された獣の道69 13Fレジェンドホース×ゴッドライダー (52)アイザック・ひまわり あらぶる獣の巣71 15F敵無からレジェンドホース×ゴッドライダー (29)ひまわり (92)ダイ あらぶる運命の奈落74 14Fレジェンドホース×ゴッドライダー (2D)アイザック 見えざる魔神の奈落97 14Fレジェンドホース×ゴットライダー (96)ひまわり 見えざる魔神の世界98 15Fレジェンドホース×ゴッドライダー (04)アイザック 見えざる魔神の巣99 14Fレジェンドホース×ゴッドライダー (94)アイザック・ひまわり
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☆S7☆ とどろく風の迷宮61 (2C)コハル あらぶる花の世界64 (80)ダイ 残された花の迷宮65 (3D)アイザック 残された獣の奈落68 (86)ダイ 大いなる岩の遺跡71 (3A)アイザック 見えざる岩の世界71 (1D)ダイ (86)ダイ とどろく空の世界71 (1D)ダイ・アイザック とどろく空の世界72 (5C)アイザック あらぶる大地の巣73 (71)ダイ 見えざる運命の世界76 (0E)アイザック あらぶる運命のじごく77 (67)ダイ 大いなる大地の世界77 (96)ダイ あらぶる魂の世界81 (6C)ダイ あらぶる夢の迷宮81 (11)ダイ 大いなる夢の世界85 (70)ダイ 大いなる運命の遺跡87 (51)ダイ (68)コハル あらぶる魔神の迷宮90 (0A)ひまわり あらぶる光の世界91 (91)コハル 大いなる光の世界91 (52)ダイ (7F)アイザック 残された神々の奈落91 (77)ダイ・ひまわり 残された闇の奈落92 (77)ダイ 残された星々の遺跡98 (67)ダイ
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ざわめく夢の地下道31 約44秒 (44)アイザック 残された運命の坑道56 約1分54秒 (6B)アイザック 放たれし運命の地底湖59 約1分53秒 (7B)ひまわり 呪われし神々のアジト65 約2分5秒 (22)ダイ けだかき魔神の沼地80 セント横80最短 約2分18秒 (05)コハル あらぶる闇の道81 セント横81最短 約2分5秒 (05)ダイ あらぶる魂の世界88 約2分41秒 (4C)アイザック 見えざる悪霊の巣94 94レベル別最短 約3分1秒 (31)コハル 大いなる闇の墓場94 約3分13秒 (32)ダイ・アイザック 残された闇の世界94 約3分14秒 (3D)アイザック 大いなる魔神の墓場95 95レベル別最短 約3分00秒 (07)アイザック 残された光の世界96 約3分23秒 (55)ダイ・コハル 大いなる星々の世界97 97レベル別最短 約3分24秒 (6B)コハル とどろく闇の眠る地98 約3分26秒 (09)アイザック
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残された夢のアジト55 13Fレジェンドホースオンリー (61)ダイ 残された夢の道61 13Fレジェンドホースオンリー (61)アイザック (8E)アイザック とどろく岩の墓場63 15Fレジェンドホースオンリー (8F)ダイ 見えざる風の世界68 14Fレジェンドホースオンリー (54)ダイ あらぶる影の世界73 16Fレジェンドホースオンリー (4E)ダイ 見えざる運命の世界77 14Fレジェンドホースオンリー (72)ダイ 大いなる闇の奈落82 13Fレジェンドホースオンリー (24)ダイ・アイザック (51)ダイ 見えざる光の世界90 15F敵無からレジェンドホースオンリー (3B)ひまわり 見えざる獣の巣56 10Fアンドレアルオンリー (4C)アイザック (63)ダイ 残された空の巣59 13F無無無からアンドレアルオンリー (10)アイザック (3D)アイザック 大いなる獣の巣62 11Fアンドレアルオンリー (88)ダイ けだかき影の巣79 16Fアンドレアルオンリー (18)ダイ 見えざる大地のじごく85 (5F)アイザック 大いなる獣の世界62 14Fゴールドマジンガオンリー (2D)ダイ 見えざる岩の墓場63 (84)アイザック 見えざる影の迷宮65 13Fゴールドマジンガオンリー (02)アイザック 見えざる空の迷宮69 16Fゴールドマジンガオンリー (3B)ダイ・アイザック とどろく大地の世界71 (27)アイザック とどろく大地の迷宮77 13Fゴールドマジンガオンリー (10)アイザック (27)ダイ 残された魂の遺跡86 16F敵無からゴールドマジンガオンリー (43)ダイ
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番外編~バッチリがんばれ~ 前ページ次ページゼロの影 その日、魔界の第七宮廷では緊張が漂っていた。 大魔王の腹心の部下ミストバーンが、タルブの村にて作り方を教わった料理――素朴ながらも味わい深いシチューを作ったというのである。 巻き添えを恐れた料理人達は沈没船から逃げ出すように厨房から姿を消し、一人残された彼がどのような調理を行ったのか目撃した者はいない。 練習作の味見をするよう無言の圧力をかけられたルイズは丁重に辞退しようとしたが、他に誰もいないことを悟らざるを得なかった。 大勢仕えている侍女達は毒見役を押し付けられることを恐れ隠れてしまったらしい。 散々ためらったすえルイズは渋々ながら頷いた。 主人として使い魔の料理を味わってみたい気持ちがあり、好奇心がそそられる。 (ひどいことになってなければいいけど) 彼は一度タルブの村でシチュー作りに挑戦した。 だが、初めて調理器具を見るということでシエスタが辛抱強く一つ一つ道具について説明するだけで多くの時間が費やされ、実際に作ったわけではない。 ビュートデストリンガーで調理器具ごと食材を砕いたり爪の剣でまな板ごと切り刻んだりするのを防止するにはどうしても必要だったのだ。 実質的には今回が初挑戦と言っていい。 初心者にもわかりやすいように詳しく丁寧に書き込まれたレシピはもらっているものの、魔界の食糧事情では同じ食材を使用できない部分もある。不安はかなり大きい。 差し出された皿の中をじっくり観察する。色は――正常だ。 (調味料の代わりに暗黒闘気を使うなんてことは、してないようね) 続いて鼻を動かす。刺激臭はない。それどころか食欲をそそる香りが鼻をつつき、反射的にお腹が鳴った。 顔を赤くしたルイズは意を決して口に運んだ。 しばし流れる沈黙。 ルイズは反応を観察する相手に険しい視線を向けた。 「……あんた嘘ついたわね? 初めて作ったとは思えないわ」 一口食べた途端に音楽が鳴り響き天界に昇るような心地になるわけではない。 涙を滝のごとく流すこともなければ、わけのわからない比喩表現を使いたくなるわけでもない。 長年の経験者や本職に比べれば劣るだろう。 しかし、予想よりは遥かに美味だった。 (なにこの敗北感……!?) ルイズは頭を抱えたくなった。 魔界に君臨する大魔王の部下。数千年の間戦いしか知らずに生きてきた存在。 それなのに料理もできるとあっては人間としての立場が無い。 嘘吐き呼ばわりされたことが理解できずにいる彼の前でルイズは食事を進めていく。 「“おいしくつくろうという情熱”が伝わってくるわ」 某シェフの食べたら筋骨隆々になる某スープを作るために必要なものが入っている。 どうやって初挑戦で無事成功させたのか粘りに粘って聞き出すと答えは単純だった。 まず、手順を念入りに確認し徹底的に記憶。 次に、必要なものを抜かりないよう完璧に用意。 そして開始する前に何度も繰り返し頭の中で最後までの流れを組み立てたという。 もちろん後片付けも塵一つ残さず綺麗に済ませている。 戦闘の方が容易だと言われたルイズは心の底から納得した。 「正面から強引に力押しで叩き潰して終わりだからね、あんたの場合」 要はシエスタのレシピに忠実に作ったということだ。 (ありがとう変なこと書いてなくて。こいつなら間違いなく実行してたわ) 始祖ブリミルと誠実なシエスタに感謝しつつルイズはこれなら大丈夫と太鼓判を押した。 あと数回練習したら、いよいよ大魔王が“召し上がる”番だ。 いよいよ本番になってルイズは我がことのように緊張していた。 幾度かの練習の後に作られたシチューが大魔王の前に運ばれると物陰から複数の気配を感じた。 料理人や侍女達が様子をうかがっている。悪魔の目玉もそこかしこに設置され、張り切って監視中だ。 (この暇魔族! 仕事しなさいよ!) 魔族は長い時を生きるゆえに密度の薄い人生を送るという言葉がどこからともなく浮かんできた。 大魔王は視線に気づいているはずだが、特に反応を見せるわけでもない。腹心の部下の真心と情熱のたっぷりこもった手料理を眺めている。 ミストバーンとルイズが凝視する中、まず一口。 場の空気が緊張に張りつめるが反応は無い。静かに食べ進める姿に痛いほどの沈黙が流れる。 一口も残さず最後まで食べ終えてから大魔王は呟いた。 「美味であった」 と。 さらにこう続けた。 「お前は余の予想を上回りおった……見事だ」 率直な賞賛の言葉に物陰から歓喜と絶望の声が響いた。どうやら敗者が一時的に石になる賭けをおこなっていたらしい。 ちなみに、彼らは後で大魔王から職務怠慢の罰を受けることとなった。 なぜかルイズは反射的にガッツポーズをしてしまったが、喜ぶはずの当人は何も言わない。ただ、目が興奮を示すように明るく光っている。 これからも作ってもらうと告げられ無言のまま頷く。 揃って退出したルイズが眉をひそめて彼の態度を批判した。 「せっかく褒めてもらったんだから“お褒めにあずかり光栄です”とか言ったらよかったじゃない」 「な……何と言えば良いのか……わからなかったのだ……」 どことなく歯切れの悪い口調にルイズの動きがぴたりと止まる。 「それってつまり――とっても嬉しかったってこと?」 こくりと頷かれた。 眼の光もいつもより輝きを増しており、心の底から喜んでいることが確かに伝わってくる。表情はわからないが口元がほんの少し綻んでいる気がした。 程度こそ違うが、戸惑う様子はレベルアップを指摘された時と似ている。 「あんたホントに数千年生きてんの?」 幸せそうな彼に思わずルイズはツッコんでしまった。 同じく数千年生きている大魔王に比べると感情を表に出すことが多く、受ける印象がだいぶ異なる。 湧き上がる感情の正体が分からないらしい彼の様子を見て、心の中で叫ぶ。 (愚か者ね……人はそれを“照れ”と呼ぶのよッ!!) 自分の言葉に絶望した彼女は床に突っ伏して泣きたくなった。 「何よ、何なのよこの切ない敗北感!?」 自分がいくら言葉を尽くして褒めようとそこまで喜ばないと認めたようなものではないか。 自分は彼にとってその程度の存在なのか。料理道的な立場から考えて。 シエスタは綿密なレシピを提供したという実績がある。 召喚してから一緒に行動してきたというのに、一介のメイドに劣る立場なのか。 ――否。そんなことは許せない。 負けを認めたくないという思いで必死に頭を働かせた彼女にある考えが浮かんだ。 「……ねえ、ご主人様の健康管理や食生活への貢献も部下の大切な仕事だと思わない?」 関心を示すように眼が光る。 「わたしがハルケギニアで一番美味しいお菓子、クックベリーパイの作り方をあんただけに教えてあげる。きっとそれを食べればとっても喜ぶわよ」 大好物なのでこれだけは作り方を知っており、レシピを書くことができる。 努力家である彼女は、クックベリーパイだけは譲れぬという信念のもとに研究に研究を重ね、独自に編み出した究極の作り方を完全に暗記していたのだ。 試しに他人に作らせてみたところ大絶賛だった。 ちなみに、自分では作ったことがない。 「わたしは天下の大魔王の一番の部下にお菓子の作り方を教えたのよ!」 と、高らかに宣言する自分の姿を想像した彼女は不気味な笑みを浮かべている。 誇る方向が色々とズレていることに本人は気づいていない。 「わたしたちの力で! あのシチューにも負けない至高にして究極の一品を! 魔界の歴史に名を刻むお菓子を作るのよッ!!」 妙な方向で対抗心を燃やすルイズと、主が喜ぶならと承知したミストバーン。 二人の魔界での伝説が、いま幕を開けた――。 前ページ次ページゼロの影
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あらぶる岩の世界56 10Fアンドレアル×れんごくまちょう (66)コハル あらぶる岩の世界65 10Fアンドレアル×れんごくまちょう (66)ダイ 大いなる大地の巣67 14Fアンドレアル×れんごくまちょう (3D)アイザック 大いなる空の世界70 16F無無無からアンドレアル×れんごくまちょう (78)ダイ 残された岩の世界77 アンドレアル×れんごくまちょう (0F)アイザック 残された夢の氷穴60 13F敵無からあんこくまじん×ヴァルハラー (7D)ダイ とどろく岩の墓場61 14Fあんこくまじん×ヴァルハラー (77)ダイ あらぶる空の墓場72 15Fあんこくまじん×ヴァルハラー (61)アイザック 残された魂の氷河74 14F敵無からあんこくまじん×ヴァルハラー (81)アイザック 見えざる風の世界76 16F敵無からあんこくまじん×ヴァルハラー (11)アイザック 見えざる神々の氷河89 16Fあんこくまじん×ヴァルハラー (0B)ダイ 見えざる光の世界96 13Fあんこくまじん×ヴァルハラー (67)ダイ とどろく獣の墓場66 11Fあんこくまじん×ホラービースト (5D)ダイ とどろく悪霊の凍土92 15F敵無からあんこくまじん×ホラービースト (69)ダイ
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前ページ次ページゼロの剣士 #1 朝食を食べ、授業が始まっても、ルイズの苛立ちは収まっていなかった。 食堂に向かう道すがら小言を垂れるルイズにもヒュンケルはどこ吹く風で、 シエスタとの約束があるからといって厨房に行ってしまったからだ。 聞くには、貴族用の重い食事ではまだ体に障るのでは心配したシエスタがヒュンケルを招いたらしい。 (なによ、シエスタやキュルケとばっかり仲良くしちゃって。あんなの胸ばっかりじゃない!) ルイズとて鬼ではない。 本来なら平民の使い魔なぞ床に座らせて固いパンでも渡すところだが、病み上がりの今回は、特別にちゃんと食事させてやるつもりだったのに……。 昨夜予期した悲劇――使い魔なしで教室に行くという不名誉こそ免れたが、そのことへのささやか感謝の念もとうに消えうせていた。 主人である自分より先にメイドと知り合っていたことといい、キュルケと話していたことといい、ルイズには何もかも気に入らなかった。 使い魔の集団の中にいるヒュンケルは今、何を思っているのか。 ルイズのことをどう見ているのか。 そんな弱気が心の底にある自分自身も、ルイズは気に入らなかった。 そしてそんな様子は――つまり授業を全く聞いていないルイズの様子は――傍目から見ても丸わかりだったのだろう。 ミセス・シュヴルーズは軽い叱責と共にルイズに小石を錬金するよう命じた。 それは簡単な、初歩の魔法。 けれども、一度も成功させたことのない魔法。 「先生、やめてください!」「先生、代わりに私が!」「無理するなゼロのルイズ!」 必死に押しとどめる級友の言葉を振り払って、ルイズは完璧な発音で魔法を詠唱し―― 例のごとく完璧に小石を爆散してのけた。 「イオラ級の威力だな」 意味不明な使い魔の言葉を背に、ルイズはがっくり肩を落としてうなだれた。 #2 二人だけしかいない教室に、椅子や机をひく音だけが響いている。 ルイズとヒュンケルは今、ルイズがやらかした爆発の後片付けをしていた。 罰として魔法を使ってはいけないと言われたが、 元からろくに魔法を使えないルイズにとって、それはちょっとした嫌味にしか聞こえなかった。 教室の雰囲気は、果てしなく重い。 倒れていた椅子を机に収めると、ルイズはついに耐えきれなくなって口を開いた。 「……『ゼロのルイズ』」 ぽつりとこぼしたルイズに、ヒュンケルはただ視線だけを飛ばした。 その目は続きを促しているようでもあり、ルイズを突き放しているようでもあった。 「聞いたでしょ? みんながわたしのことを『ゼロ』って呼んだのを。魔法成功率ゼロのメイジ。それがわたしよ……」 ヒュンケルはただ黙ってルイズを見つめていた。 きっと彼はこれまで、ルイズが自分を助けたのだと思っていたのだろう。 だから、嫌々ながらもルイズに従っていたのだろう。 しかし、事実はそれとは違うのだ。 「アンタが死にかけていた時だってわたしは何もできなかったわ。 だって、アンタを医務室まで運ぶことさえ一人じゃできないんだもん。 わたしがしたことはただ財布から金貨を出して、水の秘薬を買っただけ。 メイジが聞いて呆れちゃうわよね?」 自虐は止められなかった。 言葉と共にとめどなく涙が流れ、メイジの証であるマントを濡らす。 これまでずっと蓄積されてきた負の感情が、昨日からのあれこれで爆発した形だった。 たかが平民の使い魔になんでこんなことをと思う自分がいたが、 そう思えば思うほど、「たかが平民」と大して変わらない自分がたまらなく悲しかった。 尚も続けようとするルイズだったが、ヒュンケルが突然その肩を力強く掴み、それを押しとどめた。 思わず顔を上げたルイズの涙の跡を、ヒュンケルは指先でそっと拭ってみせ、そして言った。 「俺の命を救ったのはお前だ、ルイズ。 そもそもお前に召喚されなければ、俺はあのまま死んでいた。お前の魔法が俺を救ったのだ」 そう告げるとヒュンケルは、ルイズの眼前に左手をかざした。 涙で曇った視界に、不思議な文字が滲んで映った。 使い魔のルーン。 ルイズが、「ゼロ」じゃなくなった証。 「力があっても、使い方を間違えれば何にもならない。 お前が成功させた最初の魔法が人の命を救ったということ。それを忘れるな」 ――たとえ救ったのが俺のような人間でも。 ヒュンケルはそう付け加えてかすかに微笑むと、教室から出て行った。 思えばそれは、ルイズが初めて見た使い魔の笑顔。 初めてルイズに発せられた、心のこもった言葉だった。 後に残されたルイズは、さっきとは別の種類の涙がこぼれそうになるのを堪えながら、 「ご主人様をお前呼ばわりするんじゃないわよ使い魔!」と怒鳴ってみせた。 かくしてヒュンケルの特技――「ピンチに助っ人」属性は、ルイズの心を救うという形でささやかなお披露目を見た。 前ページ次ページゼロの剣士
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右手にあるダイの竜の紋章に続きバランの紋章を左手に受け継いだ 老バーン命名は双竜紋 竜魔人化しなくても、両手に竜の紋章を発動させた状態でドルオーラを使用できる
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前ページ次ページゼロの剣士 馬車が王都に着いた時、太陽は既にだいぶ高く昇っていた。 ルイズの癇癪やらなにやらで予定よりも若干遅い到着だったがオスマンは慌てる素振りも見せず、 乗ってきた馬車はルイズ達で使っていいと告げると、ヒュンケルに顔を寄せて囁いた。 「もしかしたら近いうちに君に頼み事をすることがあるやもしれん。その時はよろしくの?」 言うとオスマンは踵を返し、ヒュンケルが答えるのを待たずに飄々と歩き去って行く。 ヒュンケルはいぶかしげに首をかしげたが、そこでルイズがジト目でこっちを見ていることに気がついた。 ご主人様はどうやら、自分の使い魔と学院長の内緒話――というにはあまりに一方的だったけれど――が気に食わないらしかった。 「もういいでしょ、早く行くわよ!」 ルイズは仏頂面でそう言うと、ずんずん歩きはじめた。 仲間外れにされて拗ねた子供のような様子に苦笑しつつ、ヒュンケルは急ぎ足でルイズの後を付いて行く。 休日のトリスタニアは人通りが多く、穏やかな活気に満ちていた。 その雰囲気にあてられてルイズも次第に機嫌を直し、白を基調とした美しい街並みをヒュンケルに自慢し始めた。 「ここがブルドンネ街よ!この国で一番の大通り!」 まるで自分が造ったかのような調子で誇るルイズに頷くと、ヒュンケルは何処に行くつもりなのかと尋ねてみた。 思えば彼は、何が目的でここまで来たのかも聞いていなかったのだ。 しかしルイズはその質問を華麗に無視し、きょろきょろと首を巡らした。 「たしかピエモンの秘薬屋の近くだったから……こっちの方かしら?」 いつのまにかヒュンケル達は、小さな路地裏に入っていた。 大通りとは違ってここは薄暗く、時折柄の悪い連中が通り過ぎるルイズをじろじろ見つめた。 ヒュンケルはルイズを庇うように横を歩いたが、ルイズは下々の者など興味がないのか、無頓着な様子で探し物を続けた。 やがて―― 「あったわ!あそこよ!」 ルイズは目当ての店を見つけ、嬉しそうにヒュンケルに指し示した。 剣を模した看板――そこは武器屋のようだ。 ルイズはヒュンケルの顔を見上げてフフンと笑うと、威勢よく扉を開いて中に入った。 するとすかさず店員らしき女の声が、「いらっしゃいませ~」とルイズ達を迎える。 商売熱心なその様子にうんうん頷くルイズだったが、件の「女店員」は棚の影からひょっこり顔を出すと、いきなりヒュンケルにしなだれかかった。 あまりに唐突な出来事に目をむくルイズを完璧に無視し、赤髪の「女店員」は潤んだ瞳をヒュンケルに向ける。 「本日は何をお求め? 剣? 盾? それともア・タ・シ?」 「あ、アンタまさか……キュルケ!?」 女店員の正体は赤髪の魔女、キュルケ・フォン・ツェルプストー。 驚きと怒りで口をパクパクさせるルイズに向かって、キュルケは勝ち誇るように笑った。 「計算が狂ったようねえ、ヴァリエール? あたしを出し抜いたつもりだったんでしょうけど、こっちには頼もしい味方がいるのよ?」 そう言ったキュルケの視線の先には、店の片隅で置物のように座っている少女がいた。 決闘の夜にヒュンケルのもとに訪れた少女、タバサだ。 タバサは読んでいた本からちらっと目を上げてルイズ達を見ると、片手に持った長い杖を少し持ち上げた。 どうやらそれが挨拶代わりということらしい。 「……そういえばこの子の使い魔、ウィンドドラゴンだったわね」 タバサの使い魔――風竜は、学生達が召喚した中でも一際立派なものだったのでルイズも覚えていた。 察するにキュルケは、タバサに頼んで風竜に乗せてもらってきたのだろう。 ルイズ達が乗った馬車はさして急いで走っていたわけでもないし、風竜の速度ならば多少の遅れなど挽回して余りある。 歯噛みするルイズの前で、キュルケは声を上げて高笑いをした。 「ところでキュルケ、お前はなんでルイズがここに来ると分かったんだ?」 聞いたのはまだ状況が掴めていないヒュンケルである。 そもそも彼は、何故ルイズが武器屋に来たのかも聞かされていなかった。 そして質問されたキュルケよりも、何故かルイズの方が動揺するのをヒュンケルは不思議そうに眺めた。 「それはねえヒュンケル、この前の晩にあたしが話したからよルイズに。今度あなたに剣の鞘をプレゼントするつもりだってね。 この子ったら、あなたがあたしに取られるのが怖いもんだから、あたしの計画をパクッて自分の手柄にしようとしたのよ」 口をふさごうとして躍起になるルイズの腕をかいくぐりながら、キュルケがおかしくって仕方ないといった顔で話した。 「そうなのか?」と目線で問うと、ルイズは顔を真っ赤にして首をぶんぶん横に振った。 「そそそ、そんなんじゃないわよ! た、ただ、使い魔に必要なものを買い与えるのは主人の勤めだからわたしは、わたしは――」 そこまで言うとルイズは言葉を失ったようにうつむいて、足のつま先で「の」の字を書き始める。 動機の方はともかくして、ルイズが魔剣の鞘をヒュンケルに買い与える目的で来たのは確からしい。 ヒュンケルは魔剣の特殊な鞘に未練があったが、抜き身のままでは不便といえば不便だった。 「あ、あの~、お求めの方はいかがしやすか?」 そこで頃合いを見計らったように、別の声がヒュンケル達に呼びかけた。 見ると、オスマンの使い魔とよく似た顔をした中年の男が、店の奥からヒュンケル達を窺っていた。 どうやらこのネズミ顔の男が店主らしい。 キュルケ達に居座られ、今は三人の風変わりなメイジを前にした気の毒な店主はそれでも商魂たくましく、 疲れた顔に精いっぱい愛想笑いを浮かべてヒュンケル達に近づいてきた。 「聞かせてもらった話じゃあ、鞘をお求めだとか? 剣を見せてもらってもいいですかい?」 正直な話し、店主としては貴族が三人いて買うのが鞘だけというのは不満たらたらだった。 せめて、せいぜい豪奢な装飾が施されたものでも売りつけてやろうと内心息巻く。 ヒュンケルはそんな店主の内心を知ってか知らずか、無言で魔剣を入れたケースを開いた。 「こ、これはなかなかの業物で……」 店主は魔剣を手に取ると、唸るような声を漏らして言った。 その剣は華美な装飾こそなかったが、繊細さと剛直さが同居した魅力的なフォルムをなしていた。 触れた感じでは武器としての切れ味も申し分ない。 刀剣マニアの中でも特に玄人好みの逸品だと言えるだろう。 これを得意先の貴族に売りつけたら、どれだけの金になることか見当もつかなかった。 店主はゴクリと唾を飲み込むと、剣をケースの中にそっと置き直した 店主の見るところ、メイジの女連中は剣の目利きに関しては素人だ。 男の方はよく分からぬが、話を聞いた感じではメイジの護衛か何かだろう。 主人の方を落とせばどうにでもなるに違いない。 店主はこのチャンスをどう活かすか、頭をひねって考えた。 「え、え~とですなあ。残念ながら、この剣に合う鞘はありませんな。 入れるだけなら入れられますが、剣に合わない鞘は刀身を傷めますからなあ」 誠に申し訳ないという顔をした店主に、ルイズとキュルケが口をとがらせた。 肝心のヒュンケルは鞘を買うことに元々あまり気乗りしないため、無感動な表情だ。 タバサはというと、こちらはもう話しを聞いてすらいなかった。 「本当にないの?」と聞いてくるキュルケを手で制し、店主は言った。 店主にとってはここからが本題なのである。 「合う鞘はありませんが、見たところこの剣はなかなかの一品。 剣を扱い、剣を愛する一商人としてわたしゃあこの剣に惚れました。 そ、そこで如何です? 当店自慢のこの名剣と交換しませんかい? もちろんこっちには絢爛豪華な鞘もついてきますぜ?」 店主が差し出したのは細身の長剣で、鞘は宝石が散りばめられた豪奢なものだった。 もし貴族に帯剣する習わしがあったなら、こういうものを選ぶだろうといった感じの外見だ。 派手好みの貴族なら飛びつきそうなものだったが、 ルイズは「なんでそんな話になるのよ」と眉を寄せ、ヒュンケルはにべもなく首を振った。 「それは剣ではなく、美術品だ。俺には必要ない」 「合う鞘がないなら特注してもいいわよ?」 ヒュンケルの言葉にルイズが横から付け加える。 当たり前と言えば当たり前の反応だったが、店主はぐぬぬと詰まると別の剣を取りだした。 煌めく金の鞘に納められた自慢の一振りだ。 「こ、こちらの剣では如何です? ゲルマニアの錬金術師ジュベー卿が鍛えし一振り! 鉄をも両断する業物でさあ!」 「へえ、これゲルマニア産なの?」 ゲルマニアという言葉にキュルケが反応する。 実はゲルマニアの留学生である彼女にとって、この剣は祖国の生産品ということになる。 思わぬところから好感触を得て、店主は大いに気勢を上げた。 このゲルマニア製の剣、鉄をも斬るとは誇大広告だが、かなり高価であるのは事実だった。 ヒュンケルの持ってきた剣が、これと同等以上の価値を持つかは店主にもにわかには分からない。 ただ武器屋としての勘が、この選択は間違っていないと告げていた。 「その通り! 武器と言ったらゲルマニア産が一番でさあ! この剣はその中でも至高の一振りと謳われた剣で――」 女房を口説いた時でもこれほど舌は回らなかったろう。 店主は思いつくかぎりの美辞麗句を駆使してゲルマニアとこの剣を称えようと大きく息を吸う。 しかし店主が虹色に煌めく言葉の数々を吐きだす直前、まったく別のところから声が割り込んだ。 「けッ! そんなナマクラとその剣が釣り合うわけねえだろうが。ぼったくろうとしてんじゃねえよ親爺!」 唐突に響いた新しい声にきょろきょろ辺りを見回すルイズ達を尻目に、店主は慌てて声の主に向かって抗議した。 「商売の邪魔すんなデル公! 熔かして鉄クズにしちまうぞ!」 「やれるもんならやってみろい! こちとら生まれてこのかた六千年、いい加減生き飽きてたところだ!」 呆気に取られるルイズ達。 それもそのはず、店主と言い争っている声の主は一振りの剣だったのだ。 古ぼけて錆びの浮き出た剣は、鍔の金具の部分をカチカチ言わせて、辛辣な言葉を店主に投げていた。 「……インテリジェンス・ソード?」 呆けたようにルイズがつぶやいた。 意志を持つ剣があることは知識として知ってはいたが、実物を見るのは初めてだ。 剣はルイズの声を聞きつけて、「俺様が魔剣デルフリンガーよ!」と口上を上げた。 もし人間の体があったなら、エヘンと胸を張っていただろうと想像できる声色だ。 「へっ、喋るしか能のない剣でさあ。剣に喋らすなんて物好きな貴族様もいたことで」 ぶつぶつ言う店主を無視して、デルフリンガ―は今度はヒュンケルに向かって声を放った。 「おい、そこの兄ちゃん! 俺っちにもその剣を見せてくんねえか? そう、もっと近づけて」 喋る剣という珍品に感心していたヒュンケルは、デルフリンガ―の言うことに素直に従った。 魔剣を手に取り、その刀身をデルフリンガーのそれと触れ合わせてみる。 すると何故かデルフリンガ―はぴたりと押し黙り、やがて興奮したように歓声を上げた。 「これはおでれーた! この剣も俺っちと同じように意思を持ってるぜ! おい兄ちゃん、鞘を買うって話だが、その必要はねえってこの剣は言ってるぞ」 「魔剣が……どういうことだ?」 その問いは魔剣が意思を持っていること、鞘はいらないということ、二つの意味を指していた。 デルフリンガ―はじれったそうにさらに金具をカチカチ言わせてヒュンケルにまくしたてた。 「だからよ、俺っちみてえに人間の声は出せねえけど意思は持ってんだよこの剣は。 そんでもって、鞘は自分で再生するから新しいのは買わないでほしいっつってんの」 鞘――鎧となる部分――が復活するのは願ってもないことだったが、魔剣に自己修復の能力なんてあったのだろうか。 地底魔城でダイと戦うまで、鎧を傷つけられたことなど一度もなかったヒュンケルには分からなかった。 ただ目の前のもう一振りの魔剣、デルフリンガ―が嘘を言う理由は見当たらない。 どうやらデルフリンガ―は、触れ合うことで魔剣から意思を汲み上げることができるようだった。 物珍しさから何気なく手に取ってみると、デルフリンガ―はさっき以上に興奮し、また叫んだ。 「おでれーた! 今度こそホントにおでれーた! なんなんだ今日はもう! おめえ『使い手』じゃねえか!!」 「使い手?」 狂ったようにカチカチ金具を鳴らす剣に閉口しながら、ヒュンケルは再び剣に尋ねた。 武器屋の中の視線は今や、ヒュンケルとデルフリンガ―に集中していた。 タバサさえ、本を置いてこちらを見つめている。 しかしデルフリンガ―は質問を無視し、「俺を買え!」とひたすら喚いた。 正直なところヒュンケルは鎧の魔剣さえあればそれで十分だったが、デルフリンガ―の言った「使い手」という言葉が気になった。 あるいはそれはヒュンケルが体感し、タバサがほのめかした使い魔のルーンの謎に関係しているかもしれない。 「ルイズ。鞘の代わりといってはなんだが……この剣を買ってくれないか?」 いくら錆びて古ぼけた剣でも、鞘よりは高いだろう。 さすがにヒュンケルは気が引けて遠慮がちに尋ねたが、ルイズは値段などとはまったく別次元のことを考えていた。 思えばこれは、ヒュンケルがルイズにした初めてのお願い――またの名はおねだり――なのだった。 召喚して以来ここ数日、ヒュンケルの泰然とした様子に 「ご主人様」的な気分がまったく味わえなかったルイズからしてみれば、このシチュエーションはまさに理想的。 「頼むルイズ。頼れるのはお前だけなんだ」などと、言われてもいない言葉まで頭の中でリフレインした。 「わ、わわ、分かったわ。そこまで言うんなら買ってあげる。ご、ご主人様として! ご主人様として!」 大事なことなので二回言いました。 キュルケが歌うようにそう言った後で自分も金貨を出すと言い出したので、また女二人の口論が始まった。 ともあれ流れは、デルフリンガ―を買う方向にまとまりつつあるらしい。 「――ということはデル公とあの剣で交換ということで?」 どさくさに紛れてしょうもない提案をしてくる店主を呆れて見ながら、 ヒュンケルは剣とその使い手の出会いについて思いを馳せていた。 鎧の魔剣をヒュンケルに渡した人物は、言葉を交わすだけでも肌が粟立つような存在だったが、 今まさに得意げな顔をして古ぼけた剣を自分に渡そうとしている少女はとても――。 両者のあまりのギャップに少しくおかしみを覚えつつ、こうしてヒュンケルは二振りの魔剣の所有者となった。 前ページ次ページゼロの剣士